JOURNAL
nanamica
ASPHALT&GREEN RECORD vol.14
Head-to-Toe Hemp Mountain Wind for an Ikebana Moment

日本への初来訪。神保町の古本屋に、渋谷のまんだらけ…カルチャースポットで頭がいっぱいな僕をよそに、母が向かったのは住宅街の華道教室。
靴を脱いで、畳へ。器に花鋏、整然と並んだ道具に少し身構える。慣れない所作も初めて触れる文化も、着慣れた服とまっさらな気持ちで向き合いたい。緊張も束の間、季節の花々に顔がほころんだ。


ゴムシャーリング仕様の袖をたくし上げ、まずは生け花の型を学ぶところから。引き算に美しさを見出し、花が朽ちていく姿まで味わう。これって古着に惹かれる感覚と似ているのかも。このマウンテンパーカは90年代のTHE NORTH FACEのアーカイブのマウンテンジャケットを元に、100%天然の素材を使って縫い目や裾のスレ、着込んだようなアタリやフェード感を製品洗い加工で表現したもの。時間を重ねたもののかっこよさなら僕にもわかる。



気づけば額にはじんわり汗が。蒸し暑い日本でも、ヘンプ生地のドライな質感は肌離れが良く快適だし、天然素材特有の素朴な表情も畳や草花のある風景に自然と馴染む。それからオーバーサイズのマウンテンパーカにズドンとわたりの太いパンツ。ゆとりあるシルエットも畳の上では好都合だ。慣れない正座で足が痺れたら、ウエストと裾のアジャスターテープを少しゆるめて、また花と向き合って。




花を切り、挿し、眺める。動と静を繰り返す所作にも、軽やかで身体の動きを妨げないアウトドア由来の服がしっくりくる。作品を抱えた帰り道、ふと街角の花にも足が止まった。特別な場所へ行かなくても、美しいものは案外すぐそばにあるらしい。