Sea Born, City Worn. 海はどこか遠くのものではない

今シーズン、nanamicaでは漁網由来のリサイクルナイロンを用いたウエアを制作しました。
それは、私たちが大切にしている海と都市のつながりを、目に見えるかたちで表現しています。
その素材が生まれた背景をたどるため、北海道 日高の港町で漁を営む人々と、回収された漁網を新たな素材へと生まれ変わらせる苫小牧のリサイクル工場を訪ねました。

海からはじまる物語
海で働く人の暮らし、素材をつくる人の仕事、そして街で服を着る私たちの日常は、nanamicaにとっては切り離されたものではありません。海で起きている出来事は街へ続き、街で生まれるものもまた海へ返っていく。その往復のなかに、私たちの暮らし、そして服があるべき、そう考えています。
そのつながりは、数字やデータだけでは見えてきません。
港で働く人の手を通し、素材をつくる人の技術を経て、ようやくその輪郭が見えてきます。
今回フォーカスしたのは、北海道で役目を終えた漁網です。
それらがどのような人の手を渡り、どのような考え方のもとで次の役割を担っていくのか。その背景をたどることは、nanamicaが創業当時から掲げている「ONE OCEAN, ALL LANDS」(海は一つで世界はつながっている)という言葉を、もう一度見つめ直すことでもありました。

見えない仕事をつないでいく
港には、海での役割を終えたたくさんの漁網が積まれていました。
それらはゴミとして処分されるのではなく、回収ルートに乗せられ、新しい素材として生まれ変わる工程へと送り出されます。
北海道では、刺し網漁で使われるモノフィラメント製の漁網が多く、その多くがリサイクルの原料になります。毎日の漁を支えるこの網は、補修を重ねながら使われるものの、それでも使えなくなれば新しいものへと変えていきます。
漁師にとって海は、守るべき自然という前に、毎日船を出し、この先も仕事を続けていく場所です。使い終えた網を次の使命へ送り出すことも、そうした日々の営みの延長にあります。

港を離れた漁網は、北海道内にあるリサイクル工場、株式会社鈴木商会苫小牧プラ・ファクトリーへ運ばれます。
最も重要な工程が、最初の分別です。ロープや金具、貝殻などの異物が少しでも混ざれば、その後のリサイクルに大きな影響を及ぼします。

工場で目にしたのは、広げられた網を前に、大胆にはさみを入れながら異物を手作業で一つひとつ取り除くスタッフの姿でした。細かな付着物まで、人の目で確かめながら、次の工程へ送り出していく。その地道な仕事があってはじめて、漁網は新しい素材としての役割を担うことができます。ここで洗浄や分別を経て、マテリアルリサイクルによって再生ナイロン素材REAMIDEⓇ(リアミド)のペレットとなり、新たな素材への一歩を踏み出します。

人の手がつなぐ素材
モリトアパレル株式会社が開発したMURON®(ミューロン)は、リファインバース株式会社によって国内で回収された廃漁網をからリサイクルされた再生樹脂ペレットを100%原料とするリサイクルナイロン糸です。それは循環のプラットフォームであり、どの地域で回収された漁網なのかまでたどることができる、高いトレーサビリティを備えています。
MURON®はテキスタイルメーカーへと運ばれ、衣服としての機能や風合いをもった生地へと仕立てられます。
今シーズンのジャケットとパンツに採用されたのは、MURON®と仮撚糸を組み合わせたナイロン100%のタフタ素材。染色時の収縮差を活かすことで、防風性と陰影のある表情を両立しています。フッ素系化合物を使用しないはっ水加工や、ゆとりのあるシルエットを備え、クラシックなウィンドブレーカーを現代的にアップデートした一着です。日常着ではあるものの、身体を動かすようなシーンにも過不足なく着用できる機能性を持たせました。


nanamicaが目指しているのは、海に由来する素材を、都市の日常着やリラックスしたスポーツウエアとして自然に成立させることです。背景を知らなくても手に取りたくなり、着続けるなかで、その素材がどこから来たのかを知る。そうして、海から生まれた素材が、街の日常に溶け込んでいくことです。今日袖を通す服もまた、この海とつながっているのです。




