ウールの産地、尾州で織るポリエステル

ポリエステルで、クラシックな服をつくる。Polyester Twill Club Jacketは、その発想からはじまりました。軽量で均質なポリエステルは、速乾性やシワになりにくい特性を持ち、スポーツウエアやアウトドアウエアでは広く用いられています。一方で、テーラードの服に使われる生地とは少し異なる性質を持つ素材でもあります。nanamicaが考えたのは、このポリエステルを端正な表情を持つ生地へと変えることでした。スポーツウエアの機能と、伝統的な織物の技術。異なる要素を重ねながら、日常の服として成立する自然な見た目をつくること。その生地を織る場所として選ばれたのが、日本有数の毛織物産地である尾州でした。

ウールの産地、尾州
愛知県一宮市を中心にした尾州地域は、日本を代表する毛織物産地として知られています。江戸時代には綿織物の産地として発展し、明治期にウール文化が海外から伝わると、衣料用生地の生産地として成長しました。現在ではイタリアのビエラ、イギリスのハダースフィールドと並び、世界三大ウール産地のひとつに数えられています。糸の準備、染色、織り、整理加工といった工程が地域内で分業され、長い時間をかけて織物の技術が培われてきました。
尾州は長くウールの産地として発展してきました。だからこそ、均質で工業的な印象を持つポリエステルをこの地で織るという発想には、少し意外な響きがあります。化学繊維を、ウールのように呼吸を宿した生地へと変えてみたい。その発想から、尾州でポリエステルを織るというアイデアが生まれました。
織機の音が響く場所
今回の生地を織っているのは、尾州にある工場。織物づくりは、いくつかの工程を経て進められます。まず整経と呼ばれる工程で、コーンに巻かれた糸を引き出し、均一な張力で一本の大きなビームへと巻き取ります。タテ糸の集合体によって、生地の幅が形づくられます。


続いて行われるのがドローイング。タテ糸を織機の部品であるドロッパー、そうこう、筬(おさ)に通します。この配置によって、平織りや綾織といった布の構造が決まり織機にかけられた糸は、ヨコ糸を受け取りながら、ゆっくり布へと織り上がる。

現在、この工場では8台のレピア織機が稼働しています。糸にかかる負担を抑えながら安定した品質で織ることができ、衣服用の生地にも適した織機といえます。
滑りやすくフラットになりがちなポリエステル糸も、尾州の織機と職人の手にかかることで、鈍い光沢やわずかな膨らみが加わり、質感が生まれる。織りによって変化する、素材の表情。そこに、尾州の技術があります。

今回の生地では、タテ糸にPETリサイクル糸、ヨコ糸に異形断面の吸汗速乾糸を用いています。ヨコ糸に吸汗速乾糸を用いることで、適度な吸水性を持ち、快適な着心地を実現しています。さらに、タテヨコともに150d/2の双糸を使用し、S撚り200回の甘撚りに設定。一般的な撚り回数よりも抑えることで、糸にふくらみとやわらかさをもたせました。
カルゼ組織を表現するための適度な太さに加え、双糸と甘撚りによって、奥行きのある上質な風合いに仕上げています。

オーセンティックな佇まいと機能素材
こうして織り上げられたポリエステルツイルは、テーラードジャケットのかたちへと仕立てられ、完成します。見た目は端正でベーシックな印象。しかしそこには、機能素材ならではの軽やかさと、尾州の織物技術によって生まれた奥行きのある表情が同居しています。科学繊維でありながら、どこかやわらかく、呼吸を感じさせるような生地です。

糸ではなく、織りによって生まれたその質感が、日常の服として自然に着られる一着になりました。オーセンティックな佇まいと機能素材。ロマンとリアリティが重なり合うことで、Polyester Twill Club Jacketは生まれました。



