Off Shore / On Shift vol.3 海を相手に仕事をするということ
海が持つ自由でリラックスしたムードをまとうnanamicaのスタイル。その佇まいは、自然を相手にする仕事と暮らしのリズムにすっと馴染んでいます。漁師として海に立ちながら、学びの場をひらくこと。逗子・小坪漁港を拠点に活動する市川潤弥さんの、教育と海をつなぐ日常をたどりました。

自然と向き合う仕事がしたい。教壇から漁師の世界へ。
逗子・小坪漁港で漁師として活動する市川さんの一日は、日の出とともに始まります。夏は早くて、冬は少し遅い。「朝、日の出前のグラデーションを見ながら海に出て、朝のうちに浜に戻り網の手入れや出荷をします。海は、毎日同じことがなくて、1匹も獲れない日もある。コントロールできないから、“まあいっか”と手放すことを覚えました。そうすると、できることをやろうと前向きでいられるんです。漁師になる前は、海についてカッコよく語ろうと考えていた気もしますが、今は、そんなことは考えなくなりました。海がなかったら今の自分はいないので、本当にありがたい存在です」


実は人生で初めて海のそばで暮らしているという市川さん。「漁師を志したきっかけは、震災後の2019年に宮城県石巻市の教育施設で働いていた時のこと。教育の一環として漁港を訪れ、子どもたちと魚を獲り、捌き、食べる。そんな一連の経験に衝撃を受けました。そこから自然相手の仕事をやってみたいという気持ちが生まれました」。一年ほど悩んだ結果、一念発起して漁師の道へ。「魚を獲りたいというより、命をいただくことを伝える立場になりたいと思ったんです。教育と組み合わせたかったので、多様な働き方が認められる場所を探し、辿り着いたのが、逗子の小坪漁港でした」


大阪出身の市川さんは、大学卒業後に千葉県で英語教師として働き、その後、都内の商社関連企業で人事・研修の仕事を経験。「教育から離れたかったわけではなく、学校しか知らないまま“働くとは”を語ることに違和感があったんです。授業でも、実体験を伴う話と教科書的な成功談では、子どもたちの反応がまるで違う。進路相談でも、自分が社会経験をしたこともないのに、“頑張ればなれるよ”としか言えない自分が嫌で。どうせなら、いいことも苦しいことも全部知りたい。その上で人と関わるからこそ、伝えられる熱量と言葉があると思いました。行動し続ける原点は、そこにあります」
「今は、漁師としての仕事と英語教室を並行して続けています。日の出から昼までは海に出て、夕方は教室へ。教室は週2回で、漁も無理のないペースです。英語教室では、海を実践の場として活用しています。教室で覚えた英語を、実際に使うフィールドが海なんです」。獲ってきた魚をさばく工程を英語で行ったり、外国人のスタッフと船に乗って漁に出たりすることも。「実践を伴えば、例えば"Be careful"などの言葉も、状況と一緒に自然と身につきます。家で思わず英語が出た子の話を聞いたときは、手応えを感じましたね。やらされ感のない学びをどう作るかを、常に考えています」

市川さんの普段の漁師のユニフォームはブルー。長靴は必須アイテム。OFFのときは、デニムやデニムジャケットもよく着ているそう。「逗子に住んでみて初めて分かったのですが、逗子って外から見たらおしゃれだけど、実際は、良い意味でみんなゆるいんですよね。普段は普通にビーサン&ハーフパンツでゆるっといる人たちが多くて、それがカッコいい。僕もせっかく海辺に住んでいるので、そういう良い意味でのリラックススタイルをしていきたいですね」

市川さんが着ているのは、nanamicaのデニムのセットアップ。独自開発したリサイクルポリエステルとコットンの糸を染色し、軽量で耐久性もありながら、自然な経年変化を楽しめるのが特徴です。「薄い色のデニムはあまり着ないので新鮮ですね。若返った気がします(笑)」。コットンデニムよりも乾きやすく、アクティビティの多い海辺の暮らしにもフィット。海と向き合う日常の中で、気負わずに着続けられる一着です。


市川 潤弥 Junya Ichikawa
千葉県の公立中学校で英語科教員として4年間勤務。その後、都内の商社関連企業で人事・研修の仕事を経験し、宮城県石巻市雄勝町の子どもたちのための複合体験施設にスタッフとして参画する。
畑づくりや漁業などに関わり自然から恵みをもらう暮らしに感銘を受け漁師の道へ。現在は神奈川県逗子市小坪漁港で漁師として働きながら、海をフィールドに英語を教える「海と英語」などの活動を続ける。


