Off Shore / On Shift vol.4 海辺の古着屋でコミュニティを営む
海が持つ自由でリラックスしたムードをまとうnanamicaのスタイル。その空気感は、人と人が自然につながる場のあり方にも、静かに重なっています。江ノ島の海辺で生まれ育ち、古着屋を拠点に人が集まる場所をひらく伊藤さん。店という枠を越えて育まれてきたコミュニティと、そこに流れる日常の時間をたどりました。

海辺の古着屋で、人が集まるコミュニティハウスをひらく
江ノ島で生まれ育った伊藤さん。現在は、自身の古着屋『ACE GENERAL STORE』を始め、美容室、レストランなど複数の店舗が連なる建物のオーナーを務めています。ここに集まるのは、海を愛し、場所の雰囲気に魅せられた人たち。「この建物はもともと、祖父と父が経営する旅館『江ノ島荘』でした。そこを大工をしている仲間と一緒に改装して、気付けば11年目。ギャラリーもあるし、音楽をやっている友人たちの衣装やグッズを手がけることもあり、バンドスタジオを併設してイベントをしたり、ここでいろんなことをしています」


「海は…自分の一部みたいな存在ですかね。入らないと身体の調子がどこかおかしくなってくるので、その感覚が出てくると『そろそろ海入るか』って、海で調整する感じです。プライベートと仕事の境もあまりなくて、大体いつも海のそばにいます。サーフィンはショートもロングもどっちも好きで、朝は波を見て一日の過ごし方を考えますね。でも、山に行くのも好きで、岩場を登ったりもします。海と山って陰と陽みたいな関係じゃないかって、この前仲間と話したのですが、僕もどちらも行き来しながら自然とバランスを取っているんだと思います。どっちも自分には欠かせない存在です」



相方と二人で営む古着店では、伊藤さんがデザインを担当し、相方は染めを手がけています。店内の作業場にあるシルクスクリーンで一点ものを制作することもあります。自分で刷るようになって、もう7年くらいになりますね」。年に2〜3回はNYへ古着の買い付けに出向き、60〜70年代のアイテムを中心にセレクト。ブランドにはこだわらず、「いま自分たちがいいと思えるもの」を基準に選んでいるそう。「大量生産になる前の、人の手が感じられるものが好きなんです。少し個性的で味のある感じ、血が通っている感じというか」。そのセンスに魅せられたファンがわざわざ訪れるのが『ACE GENERAL STORE』です。
「正直、古着屋だけなら東京でやった方が売れる。でもここは、ただ物を置くだけじゃ人は来ない。だからこそ、コミュニティハウスとしてみんなで集まってわざわざ来たくなるような空気をつくっている感覚です」。入居する店も条件ではなく、気持ちが合うかどうかを重視。人が集まることで起こるトラブルも、じっくりと対話することで絆を深めてきました。「人同士の距離が近くなりすぎる難しさもあります。でも、その都度『ここにちょっと愛が足りないと思うんだけど、どう思う?』と話して解決する。みんなでつくる場所だから、常にみんなで対話をしながら、ここまで来ましたね」

普段から古着ばかり着ているわけではなく、シンプルな服を着ることも多いという伊藤さん。「もちろん古着も着ますが、普通に今の服も着ます。古着だけにこだわっていると思われがちなんですが、そんなことないです。特に仕事中は、動きやすいシンプルな合わせをすることも多いですね」。特に今日着ているワイドストレートカットのフィールドパンツは、一見、古着に見えるようなヴィンテージライクな表情。「店で僕が着ていると、“どこで買い付けしたの?”と聞かれそうですね(笑)。古着と合わせても全く違和感がないです」

もうひとつ、伊藤さんが着ているのは、オーガニックコットンとリサイクルポリエステルを使用した、オリジナルのパナマ素材のオープンカラーシャツ。メッシュのように隙間のあいた素材なので通気性が高く、涼しげで爽やかな印象。ゆとりのあるシルエットで動きやすく、さらさらとした生地感も特徴的です。「これは夏に海から上がったあとにさっと着たいですね。サーファーにはめちゃくちゃ重宝しそうです」。海辺で過ごす時間にも、町での一日にも自然となじむ、軽やかで心地よい一着です。


伊藤陽大 Yota Ito
先祖から引き継ぐ建物にて、24歳の時に古着屋『ACE GENERAL STORE』をオープン。サーフィン、音楽、アートなど、多彩なカルチャーが融合するコミュニティを作り出している。店舗は神奈川県藤沢市江ノ島の商店街に位置し、裏手には先代から続くレストランやサーフィンスクール、音楽スタジオが併設されている。

