Off Shore / On Shift vol.1 ハーフマイルの海辺とものづくり。
海が持つ自由でリラックスしたムードをまとうnanamicaのスタイル。その気配は、日々の暮らしの中に静かに溶け込んでいます。
海の存在を感じながら過ごす時間と、黙々と手を動かす日々。神奈川・逗子の海の近くで、革職人としてものづくりを続ける藤田竜さんを訪ねました。

海辺のハーフマイルを往復して、紡いできた10年
藤田さんが地元・逗子に工房兼ショップとしてオープンした『TRUCKIN’』は、今年で10周年を迎えます。日々、ものづくりを続ける藤田さんのそばには、いつでも海の存在があるそう。「台風で誰もいないタイミングを狙って海に行くことも多いです。ゆっくり考え事もできるし、雨だと魚もよく釣れて、一石三鳥(笑)。海って毎回表情が違うんですよね」。幼少から身近な遊びだった釣りは、もはや趣味というより生活の一部。常にバイクに釣り道具を積み、20分だけ海に立ち寄ることもあるそう。「僕にとって海は、いつでもそこにあるもので、ニュートラルな状態に戻してくれる存在ですね」。


仕事や自分の人生について考える時は、必ずと言って良いほど訪れるのが海。「逗子湾って、ハーフマイル(800m)あるんですよ。考えたい時は、とにかく端から端まで往復するんです。店を始めたばかりの頃は、アイデア出しやインスピレーション探しに来ていました。最近だと、ちょうど店の10年の節目にこれからの未来を考えたりして、何往復も歩きました。海は、そうやって自分と向き合う場所でもあるし、若い頃は仲間と集まる場所でもあったし、今は3歳になる娘を連れて遊びに来る場所でもあります。年を重ねてライフスタイルが変わってきても、海には必ず来ています」


「大学卒業後、就職はせずにスケートボードやDJをやっていました。そんな中で、当時使っていた革財布に違和感を持ったのが、革職人になるきっかけでした。あれ、なんでこのスタイルなのにこの財布?って。そこで、A3サイズの革を買い、独学でつくってみたのが最初のクラフト。そこから東京の工房に学びに入り、朝から晩まで製作する日々が始まりました。子どもが生まれてからは、生活が大きく変わりましたね。夜中まで作業をしていたのが、今は夕方には家に帰る。その分、考える時間が増えました。正直、行き詰まっている感覚もありますが、今は転換期なんだと思っています」

丁寧なものづくりでファンの心を掴んでいる藤田さん。これからは未知の分野にも挑戦したいと語ります。「正直、まだやりたいことの10%もできていない感覚。この10年は序章ですね。これからは、もっと遊びにフォーカスしたものもつくっていきたいです。最近、布製品の勉強も始めました。ものづくり自体、好きだけど得意ではなくて、習得に時間がかかる分、過程に夢中になれるのが楽しいんです。ポリシーは、自分だけで完結しないこと。革製品は何年も大切に使い込まれて初めて完成するものだと思うので、使ってくれる人たちとのやり取りや循環を、最近はとても大事にしています」


藤田さんが着ているのは、動きやすさや着心地のよさを重視したシャツとパンツ。「スケートボードをやっていた時の名残りで太いパンツを穿くんですけど、それって関節が動きやすいからなんですよ。今も、バイクに乗ったり、釣りをしたり、仕事の作業でも動きが多いので、ゆとりのある服を選ぶことが多いんです」。特にパンツは太さがちょうどよく、無理のないシルエットが気に入ったという藤田さん。「生地感にも、どこかオーセンティックな感じがあって、コーディネートがしやすい感じも好きですね」。

CORDURA®を使用したボタンダウンシャツは、フロントのボタンや裾のラウンドが特徴的。ワイドストレートカットのフィールドパンツも、製品加工でヴィンテージライクに。「僕は余白が好きだから、服も音楽もものづくりも、ジャンルを決めたくないんです。意外性も好きなんですよね。ヒップホップのDJが急にブルースをかける、みたいなギャップって、カッコよくないですか」。

藤田 竜 Ryu Fujita
「理想の財布を作りたい」と革細工をはじめ、2016年「TRUCKIN’」を設立。2018年神奈川県逗子市にアトリエを備えた店舗をオープン。現在はオリジナルアイテムに加え、クリエイションを通じて出会ったショップやアーティストとの作品、OEM製作も手掛ける。プライベートでは、バイク、スケート、釣り、レコードなどさまざまな趣味を持つ1児の父。

